千客万来

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千客万来

翌日朝から、次から次へと見舞客が現れた。 夫はアドレス帳にある友人全てに電話を入れたという。 友人だけならまだしも、仲人までにも連絡をした。 私は、心底呆れた。 それでも退屈な入院生活は、一気に華やかになった。 忘年会と新宴会を病院でしている気分だった。 幸い、入院客はほとんどいないので 騒いで他の患者さんの迷惑になる事も無かった。 ただ、誰もが、赤子を褒めてくれるが 出産後の母体を気遣うものはいない。 それだけの事なんだけれど、 私は、育児書にあった記述の 何もかもが信用出来なくなっていた。 閑散期で看護師の目は、集中する。 “船頭多くして船山に上る” 諺通りの状態だった。 ある者は 「粉ミルクを飲ませ過ぎると胃拡張になる」 と言い 他の物は、 「欲しがるだけ与えた方が、よく眠る」 とも言った。 私は、混乱した。
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