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次の日、ホテルでチェックアウトしていても、アサトと優里は2人一緒にいる気配はない。怖いぐらいに昨日の咎を責めもしないし。空港まで移動中、本当にいつもどおりに美春と優里はわちゃわちゃしてて、アサトは無口。
車窓から、北海道の広い海を見て、無言で問いかける。
――――俺の作戦は失敗したのか?
邪気のないくらい太陽の降り注ぐ輝きが、俺がスイートルームのために使った金と同じように重なって見え、俺は苦笑いした。
「ねえ、アサト。私の荷物、そんな荷物持たなくていいから!」
「お前、そんな両手に何個も抱えて、物持ちすぎなんだよ」
後ろから、飛行機の旋回する音と共に、他愛もない言い合いをしている2人の声が聞こえてきた。
「アサトが物を持たなすぎなんだよ!家にベットも布団も何もなかったくせに!」
「必要ないから買わなかっただけだろ」
振り向けば、優里はアサトの左腕を抱きしめるようにつかんでいる。アサトは太陽の光のせいもあるかもしれないけど、穏やかに微笑んで見える。そして、しばらく様子を見れば2人はちゃんと手を繋いでいるいるではないか。
「やった。俺はやったぞ」
空港前で俺は大声で叫んで、両手を広げてバンザイした。
「ヨッシャあー!」
――おめでとうアサト、優里
あんなにお互い気持ちをぶつけ合い、我慢して辛い恋をしてたんだ。きっと、2人を見て誰もが眩しいと思うほどに、幸せな時間が訪れるだろう。
そして何よりも、このグズグズに絡まった恋を解き、捌いた天才的な俺様へ。
『おめでとう!』
【完】
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