頑固な友よ、黙って俺の声を聞け

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「このことは言わないでくれ。特にあいつには…」  点滴刺されて、真っ青な顔してベッドに寝てるやつが、他人の心配をして、俺に頼み込んでいる。  こんな紅葉シーズン真っ只中のデート、観光、超最適な京都に、せっかく全国ツアーできたというのに、俺はなんで病院なんか来なきゃならないんだ。 「なあ、お前のその胸の痛みの原因は、事務所の社長にいびられただけじゃねえだろ」  同じバンドメンバーで親友でもあるアサトは、珍しく俺に電話をしてきたと思えば、部屋で胸をおさえて倒れこんでいた。アサトは心臓の病気があり、手術を受けないと1年持たない体だと言われている。だけど、本人は全国ツアーをやり遂げたいがため、医師の忠告無視して入院を拒み、仕事を続けている。 「また、だんまりか…。優里とどうせ喧嘩かなんかしたんだろ?」  同じメンバーでこのバンドの華形ボーカルでもある優里は、アサトに片想いをしている。だけど、アサトはデビュー前から優里のことをずっと毛嫌いし、憎んでいると優里本人に言う鬼畜ぶり。  
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