綾野コーチの自宅

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綾野コーチの自宅

「お~い帰ったぞ」 「あら、パパお帰りなさい。連絡貰ったので今日は一段と手を掛けて作ったのよ。」 「すみません、古本シゲルと申します。いつもコーチにはお世話になっております。」 「嘘つけ、これまで殆ど話したことも無かったくせに。」 綾野コーチには小学校に通う男の子が二人いたが、結構俺のことを知っていた。 「ねえ、古本選手って、ホームランとヒットって、どちらが気持ちいいですか?」 「淳、野球の話はしないの!ご飯を食べる時は楽しい話をすることが大切なんだよ」 「コーチってお子さんに野球の話ししないんですか」 「淳も少年野球に通ってるけど、食事の時は避けるようにしているんだ。」 「どうして?共通の話題があって楽しいんじゃないっすか」 「野球って決して楽しくないと、俺は思っている。練習は楽しいけどね。」 「えっ、コーチがそんな考えしていたなんて想像もしてなかったっす。 俺ってちょっと酔ってしまいました?」 「うん、酔っている。だからもっと酔うまえに話して置くが、バッターって五回も打席が回って来るのに、結果が出るのは何本だ? 「最近、五回も打席に立ってないっす」 「いいか、三割バッターで100打席打っても、70本は凡打だよね。ピッチャーだって、5回も持たないのが多いよね。そう考えだすと現役の頃、俺は打席に立つのが苦痛だった。」 「成る程ね、そういう考え方すると俺なら打席に入る時のプレッシャーも軽くなりますよね。」 「そうか、古本くんはポジティブに考えるんだね、それは良いことだ。」 「ママ、これから俺の部屋で食べるから料理やお酒、運んでくれないかな?」
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