コーチの書斎

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コーチの書斎

 コーチの書斎には本よりもAV機器を始めビデオカメラ、それに大きなディスプレーが設備されていた。既に現役を引退してもAV機器を使ってまで何をしているのだろう? これから何が始まるのだろう。俺には想像できなかった。 「まぁ、何処でもイイから腰を落ち着かせてくれ。今から再生するのは君が絶不調の頃のビデオだ。カッコ良くないのは承知の上だが何かのヒントになるかもなっと思ってな」 ビデオの映像はテレビ中継のものと、試合前の打撃練習の時のものだった。 いずれもスロー再生が出来るよになっていた。 「古本、このスイングでファールしたのを覚えているか?」 「ええ、シナモンズのフジタが失投して絶好球をど真ん中に放り込んできたのを今でも覚えていますよ。あのときほどシマッタとと思ったことはなかったっす」 「どうしてシマッタと思った?」 「あんなに甘い球を、少し振り遅れてしまいファールしてしまった・・それだけに悔しかったんです。」 「これはどうかな?・・これも覚えている?」 「これは覚えていませんが、明らかにスライダーのブレーキに待ちきれずボールを迎えに行ったブザマなスイングだよね。」 「俺はどちらの古本も共通した原因がそれぞれの結果になっていると思うんだ。 つまり、ストレートの速さがまぁまぁのピッチャーだけに、ストレートには振り遅れまいとスイングスピード意識して逆にバックスイングを大きく取りすぎている。」 「だったらスライダーを迎えに行って下半身を崩されたのは?スイングスピードが遅ければヒット出来る筈では、理屈が合わないと思いますが?」 「馬鹿だな、そこまでスイングスピードが遅ければ、バットに当たっても今度は飛んでくれないじゃないか。」
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