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「観覧車に乗るみたいだぞ。俺たちも乗るか」
「でも後から乗ったら二人が先に降りちゃうじゃん」
「確かに。じゃあ隣のメリーゴーランドに乗ろう」
「あんな子供たちいっぱいの中にいたら目立つでしょ」
「じゃあコーヒーカップで手を打つか」
「どうしてそんなに回転したいの?」
ゆっくりと迎えに来たゴンドラに乗り込む真希子たちを見送って、私たちは結局アトラクションには乗らず少し離れたベンチに座った。
「俺が回転したいんじゃない。遊園地が俺を回しに来てるんだ」
「確かに遊園地はとりあえず回しとけば楽しいだろって思ってる節があるけどね」
かくいう私も観覧車は好きなのだが、それはもう遊園地の術中にはまっていると言えるのかもしれない。
「はいコーヒー。ブラックだよね」
「ありがとう」
日が傾きはじめて、風の冷たさが増してきた。
屋台で買ったホットコーヒーを差し出すと、明はそれを両手で受け取って指先を温める。そういえば末端冷え性だったっけ。
「ここならバレないかな」
「うん、絶妙にいいベンチだと思う」
観覧車から降りてくる二人からは意識して見なければ見つからない距離だが、こちらからは見える位置だ。
こうして二人してバレないように尾行しているのも勿論、今回の作戦のうちだ。
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