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北風がアスファルトの上で落ち葉を転がす音が聞こえる。
それほどに私は絶句して、真希子の報告に耳を疑った。
「……え、ほんとに?」
「ほんとよほんと」
「なんで? だってこの前まで」
「ちょっと朱音ストップ」
言われて私は慌てて口を噤む。しかし和人はそれに敏感に反応して「この前って?」と訊き、対して真希子は「女の子同士のヒミツよ」と誤魔化した。
「ほら、今日って家族連れ多いじゃない?」
真希子は辺りを見回し、私はその視線を追いかける。
遊び疲れて眠ってしまった子と背負って歩く親。
遊び足りないのかぴょんぴょんと飛び跳ねる子と手を繋ぐ親。
買ってもらったお土産を笑顔で抱きしめながら歩く子とそれを見て微笑む親。
様々な家族の形がここにはあった。
「今日一日遊びながら、色んな家族連れを二人で見ててさ。そしたらだんだん『ああいうの良いなあ』ってなって、そのまま結婚の話になってね。……それで、観覧車の上から見た夕焼けがすごく綺麗だったから」
それから真希子は少し照れくさそうにして「わたしの子供にも見せてあげたいなあ、って言っちゃったの」と笑った。
和人の返事は聞かなくてもわかる。
だってこの二人は、奇跡を起こしちゃうほど気が合ってるんだから。
「だから朱音。この前は色々言っちゃったけどさ」
真希子は自分の右腕をもう一度強く和人の左腕に組み直し、私に見せつけるように左手で大きくピースをする。
「わたし、こういう感じで幸せになることにしたよ」
非の打ちどころのないほど幸福そうな二人の笑顔は、カラフルなライティングに照らされて虹色に瞬いていた。
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