プロローグ

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プロローグ

「結婚しよう」  周りに星を散りばめたような明るい笑顔で言う彼は、どのおとぎ話の王子様よりかっこよくて美しい。  自分がお姫様になったかのような錯覚まで起こしてしまう。  現実、この人と結婚すれば私は本当にお姫様になれるだろう。  だって彼は、生粋のお金持ち。  汐原商事の御曹司にして飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しているベンチャー企業社長の汐原(しおはら)(けい)なのだから。  テクノカットの銀髪に大きな二重(ふたえ)とアヒル口が特徴的な彼と出会ったのは数ヶ月前。  たった数ヶ月の間に盛り上がった訳ではなく、これはある意味、切羽詰まって私にお願いしているのだ。  だが私は彼のお願いを聞くことはできない。 「お断りします」 「わ~い! ……今なんて?」 「結婚いたしません」  ぽかんと目を丸めて私を見つめるその姿はなんだか愛くるしい。  まるで子犬を眺めているようだ。 「いたします!」  息を吹き返した彼がそう言う。 「いたしません」 「いたしますしかいたしません!」  何を言いたいのか分からなくなるのだが、とにかく彼は私との結婚を進めたいようだ。
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