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「ええ。映画監督気取りの方がいらっしゃったので試しに編集をお願いしたのですよ。さぞかし滑稽なものを作られるだろうと思ったら結構センスが良かったですよ」
金持ちに遊ばれた映画監督は意外な所で評価を得たようだ。
「もしかして映像って」
「もしかしなくても森重さんが撮った動画も使わせていただいております」
「それは」
私が立ち上がろうとすると深山は止めた。
「使わせていただきましたがおまけ映像ですよ。彼女があなたのことを陥れようとした際に流すためです。何もしなければ流れないのでご安心を」
それは良かった。盗み撮りしたものを勝手に使われるのは嫌だった。
「ほとんど彼女が撮れと命じて彼らに取らせていた破廉恥映像です。もちろん上映できる範囲に収めるためモザイクを入れております」
いや、それを両親の前で流されるなんてそりゃあ、悲鳴と怒号が重なり合うわけだ。
「それと、ポスト投函を依頼した男性も見つかったので証言している映像も入れております」
「見つかったんですか?」
「ええ。慧が本気になれば犯人捜しなんて朝飯前ですよ」
やっぱり慧を敵に回すべからずだ。
「ありがとうございます」
「それは彼に言ってください」
そう言って深山は立ち上がり、歩き始めた。深山の先にいたのは慧だ。
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