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遅れる時間ではないものの、自分を落ち着かせる為にもコーヒーを飲む時間ぐらいは残して部屋から出たい。
このまま部屋中を探しまわっても女性の痕跡が出て来るわけがないのは分かっている。
昨日の出来事は俺の妄想の中での出来事だったということにして、何もかも現実ではなかったと自分に言い聞かす。
まだまだ諦めが付かない気持ちのまま部屋を出ようと、スリッパから靴に履き替える。
右足を履いて、左足も履こうと靴に足を入れた瞬間つま先に何かが当たる。
何が入っているのかと、靴を逆さまにすると中からネームプレートが出て来た。
床に転がったネームプレートを拾って見ると
『帝国ホテル 相原楓』
俺が唯一記憶している女性の情報が目に飛び込んでくる。
下の名前は知らなかったが、いい名前だ。
記憶の中にいる彼女にぴったりだと思った。
間違いなく昨日の女性のものだ。
驚きと興奮のあまり息があがってくる。
震える指でスマホで検索する。
『帝国ホテル』
思っていた通り、俺が宿泊しているホテルの隣のホテルだ。
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