信じれらない朝

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ネームプレートをポケットに突っ込むと、部屋中に散らばっている自分の荷物をスーツケースに詰め込む。 そのまま急いでホテルのフロントに行くと、残りの宿泊予定を全てキャンセルする。 支配人が出てきて失礼があったなら申し訳ないと頭を下げてくる。 ホテルには全くの落ち度がなかったから、それを伝える。 引きつった顔している支配人に告げるのは残酷だよなと思いながらもレセプションパーティーの予約もキャンセルする。 準備にかかった費用と打ち合わせに使った時間の料金を今回の宿泊料金に上乗せして請求して下さいとお願いする。 引きつった顔をしていた支配人は今にも泣きだしそうだ。 俺も何でこんなことをしているんだと頭では自分を制御しようとしているのに、体と口は心に支配され勝手に動いてしまう。 帝国ホテルのネームプレートを見た今、彼女がいる保証もないが今すぐ行かないと後悔すると俺の直感が訴えている。 そのまま清算を終えると、はやる気持ちを抑えて帝国ホテルへ足を急がせる。 帝国ホテルが目の前になると逸る気持ちが抑えられず、気付いたら小走りになっていた。
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