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近付く作戦
何故俺を覚えていないのだろうか。
もちろん俺も名乗ったわけでもないし、連絡先を交換したわけでもない。
だけど、それ以上に刺激的な一夜を共に過ごしたと思っている。
俺は忘れたくても忘れられない想い出になってしまっている。
同僚と思われる男性がプロジェクターのピントを直してくれて、部屋から出て行ってから何度も同じことを繰り返し頭の中で呟いている。
コンコン・・・・
ドアをノックする音で我に返る。
ハッとして時計を見ると打ち合わせの時間だった。
準備を終えてからトリップしてて良かったと胸を撫でおろす。
ドアを開けに行くと、打ち合わせの相手が目の前に立っていた。
「ちょっと、空。勝手にホテル変えないでよ。」
ドアを開けるといつもの勢いで詩織が入ってくる。
最初ノックをしたのは、部屋を間違えていたらいけないという彼女なりの配慮だったんだと、ドアを開けて分かった。
「ごめんごめん。気分転換したくてね。」
「あんたが日本に来るたびに私が秘書させられるの何とかならないの?私の本業はマーケティングなんだけど。」
「久々に会ったのに、随分なご挨拶だな。元気そうで良かった。」
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