信じれらない朝

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「こちらの女性に炭酸水を。」 驚いたような顔でこちらを見ている女性と目が合う。 「飲み過ぎなようなので、炭酸水でスッキリしてみて下さい。」 隣に座ってから、この瞬間までこの女性の声を聞いていない。 つまりは、この女性は一言もしゃべっておらず俺ばかりがしゃべっている。 今まで女性に不自由したことないし、こんなにも反応が悪い女性は初めてだ。 なんとかしてこの女性のポーカーフェイスを崩したい。 「今日は仕事で疲れていて飲むか迷っていたけど、貴方に会えてバーに入ってきて良かった。」 これを言えばイチコロだろ、と思いながら女性に目を向ける。 みるみるうちに顔が歪んで、喜ぶどころか不快を感じているかのような表情になる。 「気を悪くされたなら、すみません。いきなりこんなこと言われても気を悪くされますよね。すみませんでした。」 みんな上品に飲んでいるのに、なんて有様だと恥ずかしくなる。 これは注文したものが届いたら、とっとと飲んで帰った方がよさそうだ。 ちょうど、マスターが女性が飲んでいたものと同じワインを持ってきてくれた。 急いで飲んでしまおうとグラスに手を伸ばす。
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