4093人が本棚に入れています
本棚に追加
「こちらの女性に炭酸水を。」
驚いたような顔でこちらを見ている女性と目が合う。
「飲み過ぎなようなので、炭酸水でスッキリしてみて下さい。」
隣に座ってから、この瞬間までこの女性の声を聞いていない。
つまりは、この女性は一言もしゃべっておらず俺ばかりがしゃべっている。
今まで女性に不自由したことないし、こんなにも反応が悪い女性は初めてだ。
なんとかしてこの女性のポーカーフェイスを崩したい。
「今日は仕事で疲れていて飲むか迷っていたけど、貴方に会えてバーに入ってきて良かった。」
これを言えばイチコロだろ、と思いながら女性に目を向ける。
みるみるうちに顔が歪んで、喜ぶどころか不快を感じているかのような表情になる。
「気を悪くされたなら、すみません。いきなりこんなこと言われても気を悪くされますよね。すみませんでした。」
みんな上品に飲んでいるのに、なんて有様だと恥ずかしくなる。
これは注文したものが届いたら、とっとと飲んで帰った方がよさそうだ。
ちょうど、マスターが女性が飲んでいたものと同じワインを持ってきてくれた。
急いで飲んでしまおうとグラスに手を伸ばす。
最初のコメントを投稿しよう!