アクションタイム 〜序章〜

11/12
前へ
/12ページ
次へ
数日経ったある日、少し調子が良いと感じたのでダメ元で夜の8時50分にアクションタイムを装着してみました。 すると、大きなテレビのような画面に『END』と表示されていました。 あぁ、終わってしまっていた、と項垂れていると、画面の横から館林さんがピンクの花束を持って出て来ました。 「こんばんは、莉緒様。おめでとうございます。初日は暴走、ラストはボイコットという形でしたが、莉緒様の真剣にお掃除するという演技の受けが出演者にも視聴者にも良く、高い評価が得られましたよ」 そう言って館林さんは莉緒に花束を渡しました。 VR内とはいえ、莉緒は花束を貰ったのは初めてで、つい涙目になりました。 「あ、場所を移動しましょう」 そう館林さんがいった途端、初めてアクションタイムを装着した時に居た喫茶店の中にいました。 「こちらにお座りください」 案内され、また店員さんがコーヒーとココアを運んできました。 「今回の出演の評価によって、報酬と次回作への出演の権利を得る事ができました。莉緒様は高校生なので、報酬を今受け取られるなら図書カードと言うことになりますが…その額3万円分です。卒業後であれば現金で受け取れるので、貯めておく事も可能ですよ」 莉緒はその額に驚きました。 1日2時間楽しまさせて貰って報酬が得られるなんて…。 「主役なら、もっと高い報酬が得られるのですか?」 莉緒はアクションタイムを楽しむ事で、欲が出て来ました。 報酬を得て、自分の治療費を稼ぎたい、健康な身体が欲しいと。 アクションタイムの中で走った気持ちよさを、現実の世界でも試したい。 仲間と話したり、働いたり…自分のために時間を使いたいと。 「残念ながら、主役は逆に出演料がかかるのです。結構な金額が必要ですよ。しかし、主役以外であれば報酬が得られ、メインキャストなら報酬は高いです。しかし、メインキャストは一定の評価を得た者しか選ばれません。最初は脇役で、評価を高めていく必要があります」 つまり、この世界の出演者は「主役」がストーリーをリアルに体験出来る様にする為に雇われているという事なのだと理解しました。 「わかりました。私、もっともっとアクションタイムを利用したいです。でも、今は身体が辛いので…また調子が良くなったら、お願いします」 そう言って莉緒は頭を下げます。 「わかりました。正式に契約という事で…後日ゴーグルとヘッドホンの充電器を送らせていただきますね。昼間に充分充電して、夜はコードを外してご利用くださいね。では、またのご利用お待ち致します」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加