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目を開けると、テーブルを挟んだ正面にスーツを着た男性が座っておりました。
自室にいたはずの莉緒は、いつの間にか喫茶店らしきお店の中にいます。
女の子達が笑いあう声、店員さんのよく通る声、食器が重なり合う音でガヤガヤしています。
「初めまして、莉緒様。私『ドラマスペース研究所』の館林と申します。この度は我が社のVR商品『アクションタイム』をご利用いただき、ありがとうございます」
スーツの男、館林さんは深々と頭を下げます。
莉緒もつられて頭を下げますが、状況が理解できません。
「あぁ、莉緒様。困惑されて当たり前ですよ。今、莉緒様はゴーグルを通してバーチャルリアリティ、つまり作られた世界にいます。かなりリアルでしょう?驚きますよね」
莉緒は驚くも何も、バーチャルリアリティという言葉が理解できず『部屋にいた自分が何故ここにいるのか』というところで思考が止まっています。
「お待たせいたしました」と店員さんが館林さんにコーヒーを、莉緒の前には温かそうなココアを運びました。
甘い香りが鼻をくすぐります。
ココアなんて、莉緒は人生で1回だけしか飲んだことはありません。
「どうぞ、お召し上がりください。熱いのでお気をつけて」と館林さんは自分もコーヒーを手に取り、勧めます。
熱さに気をつけながらそっと飲むと、自分が知っているココアとは明らかにちがう、お高そうなココアの味がしました。
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