アクションタイム 〜序章〜

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「美味しい!…あ、私お金を持っていません…」 莉緒は思わずここの支払いを心配してしまいました。 それには思わず館林さんも苦笑い。 「ご安心を。今、莉緒様は実際にココアを飲んでいるわけではなく、飲んでいると感じているだけです。この熱いココアのカップも喫茶店も、このVR内のみに存在します。莉緒様が今装着されているゴーグルとヘッドホンは、視覚と聴覚で5感を体験出来る商品ということがお分かりいただけましたか?」 莉緒はいまひとつ理解できていませんでしたが、これが作られた世界であれば、なんて素敵なのだろうと思いました。 「この喫茶店も店員もお客も作られたもので実在しませんが、私だけは莉緒様同様現実世界に実在する人間であり、ゴーグルとヘッドフォンを装着してこのVR空間に入っております。つまり、同じVR空間を複数の人間が共有することが可能なのです」 莉緒は驚き、周りを見渡します。 喫茶店自体そう利用したことはありませんが、周りの人は普通の人間に思えます。 「そろそろ本題に入りましょう。私共はこのVR「アクションタイム」を使い、別の人生をドラマのように疑似体験していただく空間を提供しております。そしてそれを観覧し、評価をつけ、課金という形で応援する視聴者がございます。話の内容が面白ければ、出演者にファンが付き、報酬が得られます」 思わず莉緒は『報酬』という言葉に少し反応してしまいました。 館林さんはその反応を見逃さず、ニヤリとします。 「よりリアルな体験をしていただくために、主役から脇役まで登場人物はほぼ実在する人間、台本無しとなっております。そのため話が進まなかったり、暴走したりして強制的に退出させられたり打ち切られる話もありますが…。またそれはそれで一興ということで」 館林さんは「学園」「王宮」「動物」とそれぞれ書かれた3枚のカードをテーブルに並べました。
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