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夜の8時50分になりました。
莉緒は台所の片付けを済ませ、お風呂にも入り、宿題も済ませました。
内職しているお母さんに「勉強の後そのまま寝るから」と伝え、お酒を飲んで眠っているお父さんに毛布をかけ、自室に戻りました。
ゴーグルとヘッドホンを装着し、ベッドに横たわり、布団を被ります。
いつもであればそのまま寝落ちしてしまいそうですが、今日は違います。
本当に物語に出演出来るのだろうか、私は一体何の役を貰うのだろうか。
緊張で胸が高鳴ります。
8時55分になりました。
目の前に、大きなテレビのような画面が表示されました。
『題目「王子と瓜二つの私(女)は替玉を命じられました」
あなたの役「掃除係(庭担当)」…王宮の周りの掃き掃除をしてください』
カウントダウンが始まり、9時になりました。
ストーリー開始です。
瞬きをした次の瞬間に、莉緒は大きなお城の庭に立っておりました。
見上げると、青空が広がり、温かい日差しも感じます。
木々の上で囀る小鳥、広場で剣の訓練をする兵士の掛け声。
これが実在しない世界とは思えないほどリアルです。
莉緒はふと、自分が漫画で見たメイドの格好をして、ホウキを持っていることに気が付きました。
『ようこそ、アクションタイムの世界へ。そのまま掃除を始めてください』
足元で声がします。
見るとリスが1匹、胡桃を抱きかかえてこちらを向いています。
『驚かずに。私、館林でございます。本日は莉緒様へシステムのご案内と演技指導をさせていただきます。出来るだけ私の存在は無視していてください。質問等ございましたら、小さなお声でお願いします』
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