I need you.

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 ライゼス教授が消えて、四十年。世界の誰もが認めてくれたのなら、いったい、次は誰に認めてもらえばいいのだろう──。  かつての世界的ロボット工学権威・イーゼの名前は、日進月歩のロボット工学会では十年で忘れ去られようとしている。自分を無条件に認めてくれた夫は、老いて死んだ。 「誰に認めてもらえばいいでしょうか」  イーゼは古くなったボディのパーツの換装を、やめた。  存在価値を見出し続けられなくなれば、あとは朽ちていくだけだ。  世界で自分の承認欲求にボーダーラインを設けてくれる存在は、一人しかいなかった。その一人は四十年も行方不明のまま、とうの昔に社会的死を迎えていた。肉体的にも、絶望的だった。 「教授……どこにいますか」  壊れた涙袋から涙が流れた。  かつてライゼスが使っていた邸宅で、剥がれ落ちた皮膚と、動かなくなった手をぶら下げたまま、庭に出る。  今日もライゼスが帰ってきていないか、一日中見守る。  そしてついに足が動かなくなった時、イーゼはその場で仰向けに倒れ込んだ。
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