PROLOGUS

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 ダニエルは無言でこちらを見ていた。  開け放している扉の方を何気に振り向くと、雪がちらちらと舞っている。  アーケードの屋根の壊れた箇所から吹き込んでいるのか。  コートも着ずにコンクリートの床に座るダニエルを見た。  寒いのではないか。  怪我の様子は。先程から表情も変えず何も話さないのは、出血が酷いせいではないのか。  本心では、自身の外套を掛けて暖かい部屋に連れ込み、怪我の手当てをしてやりたかった。  だが、そういった情を利用されていたのだ。  せめて間違いだと言ってくれないかと心の中で懇願する。  ここで「冤罪だ」とひとこと言ってくれれば、疑わしきは罰せずの法の精神に沿いひとまず保護することが出来る。 「言い分があるなら自由に……」 「大した情報も持っていなくてがっかりだ」  ダニエルはそう呟き、溜め息を吐いた。 「体まで張ったのに」  ひんやりとしているはずの空気を感じなくなっていた。自分は興奮しているのだろう。アレクシスはそう自覚した。  軍の応援がすぐにここに来るかもしれない。  だが唐突にどうでも良くなった。  つかつかとダニエルに近づく。怪我をしていると思われる肩をグッと掴み、古い紙屑の散らばるコンクリートの床に押し倒す。  ダニエルは顔を歪めたが、すぐに真顔になりアレクシスの顔を無言で見上げた。  司祭服の襟の留め具を乱暴に外し、胸元をはだける。  恋人として過ごした時間を再現すれば、違う答えが引き出せるのではないかと思った。
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