会社 ➡ 喫茶店(今日は雨だから...)

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会社 ➡ 喫茶店(今日は雨だから...)

 こういう雨の日は、いつも行く所がある。  会社の最寄りである馬車道から、東急東横線を使って数駅、そこからまた少しだけ歩いて数十分の所にある喫茶店。  そこがいつも、私が雨の日に訪れる場所だ。  晴れていたり、休みの日には、何もそういう所を決めていないのに......  こういう雨の日の平日は、いつも決まって、必ず、私はこの喫茶店を訪れる。  店内に入ると、数組のお客さんと、三人の店員さんが、私を出迎える。  「いらっしゃいませ」  けれどその中に一人だけ、いつも私を最初に見つけて、いつも最初に声を掛けてくれる男の子がいる。  「こんにちは」  そう私が言うと、彼は涼し気な笑顔で、接客をしてくれる。  たぶん、この近くの大学に通う学生だろう。  ここのお客さんも、そして店員である彼も、きっと皆、まだ学生なのだ。  「いつものでいいですか?」  「えっ、あ、そうね。いつもので......」  「かしこまりました」  そう言って、彼は私に軽く頭を下げて、その場を立ち去る。  考え事をしていたからか、彼の言葉が一瞬だけ、頭に入って来なくって、それが少し怖くて、戸惑った。  あぁ、こんなことで、少し戸惑ってしまった......  恥ずかしい......  もう彼とは違って、私はいい歳なのだから、こういうことも上手くできなくてはならないのに......  そう思いながら、私は窓の外の景色に目を配る。  その視線の先に映る雨の景観は、さっきまでとはまるで、違っているようだった。
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