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媚薬
コトリっと小瓶をテーブルに置く。
その小瓶は透明なガラスでハート形をしており、中の液体はキラキラとピンク色に輝いている。
コルクでしっかりと栓をされたその小瓶はとても可愛らしく、一見しただけではまさかあの薬であるとは思えない。
あの薬とは〖媚薬〗。
そう、惚れ薬である。
そしてこれはどうも本物らしい。
実はこれ、富豪の祖母が送ってきた。
高名な魔女に特注で作って貰ったらしい。
シルフィもいい歳なんだし、意中の彼のハートをこの〖媚薬〗でゲットしなさい!という手紙まで付けてきた。
余計なお世話!とか思ったけど、待てよと思い直した。この〖媚薬〗を試してみたい相手がいるのだ。
いつも私の恋路を邪魔しに来るアイツ。邪魔したついでに私の頭にポンと手を置き、笑って去っていく。憎たらしいったらない。日頃のうっぷんをこの〖媚薬〗で晴らすのだ。
アイツにこの〖媚薬〗を飲ませて私にメロメロになった姿を見てみたいものである。さぞや胸がすく事であろう。
いや、別にアイツの事が好きだとかそういうことでは決してないのだ。
ただ、この〖媚薬〗が、本当に効果があるかどうかが不明だ。家の飼い犬ルンのご飯に少し混ぜて食べさせた所、途端に私にすり寄ってきたから多分いけるとは思う。
人に対してはぶっつけ本番になる。まあどうにかなるでしょうってことでいざ出陣。
アイツことクリスとは幼馴染みで家も隣だし職場も一緒の腐れ縁。
金髪に切れ長の碧眼。眉目秀麗で背が高く、文武両道と来る。非の打ち所のないとは彼の事を言うのだろう。
周りのうら若き乙女たちは彼に夢中らしくて、色んな恋の噂が後を絶たない。
そのくせ何故かいつも私の恋路を邪魔しにくる。この間も職場の先輩から食事に誘われたら即行でやって来て断りの文句を述べていた。
何でって問いただすと「あの先輩はお前には勿体無い」とか言うじゃない!!いくら幼馴染みだからっておかしいでしょ。
もしかして、私のことが好きなの?と聞いたこともある。そしたら、「お前、何言ってるの?」と言われた!
ホントに勘弁して欲しい。
今日こそはこの薬でギャフンと言わせてやるのだ。もう笑っていられないぞ!
見てらっしゃいクリス。
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