私の譲り

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 よく父は 「12月には天使が来るんだよ。」  と言っていた。幼い頃は純粋にどんな天使が来るのかワクワクしていたけれども、実際に天使には会えなかったから、 「天使は今年は来なかったの?」  と聞くと 「僕のところには僕の天使が来たよ。いつの日かお前にもお前の天使がやって来る。」  と答えたのを覚えている。その時は、「天使は一人一人に来るんだぁ。」と思って、いつ私の天使が現れるか毎年の12月を楽しみにしていた。でも、いつになっても天使は現れなかった。  そのうち天使よりもサンタクロースに興味が移って次第に“私の天使”について忘れていった。
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