私の譲り

7/11
前へ
/11ページ
次へ
 休憩もそこそこに堪能し、陽気を取り込んだ私は一度伸びをして立ち上がった。母に「行ってきます。」と言い、「はい、いってらっしゃい。」というやりとりをして書斎へと向かった。書斎は相変わらず本だらけの状態で私を出迎えてくれた。「さて、やりますか。」と呟いて、私は“天使探し”を始める事にした。  天使が何か分からないけれど、ひとまず棚に置いてある本を眺めて回った。どれも使い込まれていたけれど、丁寧に扱っている事が分かる綺麗さだった。父は史学の教授で、定年退職した後も自分の研究を続けていたらしく、ここにある本も現役で使われていたことを物語っているようだった。専門は西洋史だったので外国語の本もあるようだ。本の背表紙をなぞり、タイトルをくちずさみながら進んで行くと、他とは違う一画を見つけた。そこに置いてあるのは 「小説?」  そう、小説がずらりと並んだ一画だった。よく見ると作者が同じ小説だ。父は本をよく読む印象があったけど、小説を読むイメージはなかったから驚いた。いったい父が読む小説はどんなものだろうと思い少し読んでみることにした…
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加