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こちらを向いた早蕨が、カッカッカッ、とヒールのいい音をさせてやってきながら言う。
「あら、ちょうどいいところに。
暇そうね」
「えっ?」
「いや、サボってませんっ」
「ちょっと立ち寄っただけですっ」
と千景、律子たち、将臣が同時に慌てて言った。
……何故、社長まで。
さすがの早蕨さんも、社長に、あら、暇そうね、とは言わないと思いますよ、と思った千景の腕をむんず、と早蕨がつかんだ。
早蕨は後ろを振り向き、見たこともない若い男性社員に、
「この子、借りるわよ」
と言う。
は、はいっ、とコーヒーに砂糖を入れかけていた彼は、ビクつきながら言っていた。
いや、あなた、誰なんですかっ。
何故、私は今、この人に借りられましたっ? と思ったのだが。
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