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あとで早蕨に訊いたところによると、どうやら、彼は編纂の社員その一、だったらしい。
普段は広報にいるので、資料をデータで流すくらいしかしておらず、新米の千景は知らなかったのだ。
さすが、早蕨さん。
社長ですら、社内にあとどれだけ編纂の一派が潜んでいるか知らないらしいのに、と思いながら、会議の手伝いに駆り出される。
「このダンボールのお茶、テーブルにひとつずつ置いてって」
はいっ、と最上階のフロアの隅に積まれていたダンボールを抱えて向きを変えたとき、角にいた誰かとぶつかった。
「あっ、すみませんっ」
と千景は、やけにひんやりしたその人を見る。
……人ではなかったな。
「あ、最下層の狸……」
とつい呟いて、
「なに、最下層の狸って」
と忙しげに通りかかった早蕨に言われてしまった。
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