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ナツさん。裕太郎さん。
ビターな人生を知っていて、それなのに甘くて、ほっとする優しさで、大人でーー。
今度、ナツさんをイメージしたブレンドコーヒーを作ってみよう。
次こそは、「Natsuブレンド」と名前を付けてお店で提供しないと。
私が初めて作った「Ritsuブレンド」は、ナツさん好みのケニアをメインにしたコーヒー。香りの王様と呼ばれるケニアの主張が強い特徴的なコーヒーになった。
私はこのブレンドコーヒーのような女の人になりたい。
爽やかで、強い佇まいを感じる香り高いコーヒー。
「僕はもう、人を好きになるつもりはなかったんですけどね」
「……それって……」
ナツさんは、その童顔の顔を恥ずかしそうに歪めると、気まずそうに頷いた。
「利津さん、今度の日曜日……どこか行きませんか? その、市場調査とかじゃなく……」
「旅行とか?」
私が提案したら、ナツさんは今まで見たこともないほど真っ赤になっていた。首から耳までが赤い。
それに、なんでそこで言葉を失うんだろう。
これ、もしかして照れてるの? 私のこと誘えなくて……?
「じゃあ、土曜の夜から温泉連れて行ってくださいよ」
「あ、ああ……温泉、そうですね、確かに、癒されそうですよね」
「すでにガチガチじゃないですか!」
私が笑うと、真っ赤な顔のまま困った顔をしているナツさん。
ああどうしよう。ナツさんは年上の男の人なのに、かわいいって口に出してしまいそう。
実はもう好きなところは数えきれないほどあるけれど、このナツさんは初めて見た一番好きなナツさんかもしれない。
そう思ったらなんだかじっとしていられなくて、お花の瓶を置いてナツさんの腕にしがみつく。
ナツさんは、こちらを見ずに「週末、予定しておいてくださいね」と念押ししてくれた。「もちろんです」と返事をしたけれど、幸せでどうにかなってしまいそう。
片想いでいいと思いながら側にいたけれど。
叫びたいほど、この人が好き。
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