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例えば、ハンドドリップは蒸らしの時間が大切で。
何もしていないように見えて、待っている時間に美味しいコーヒーが抽出できる。
動いているばかりが大切な時間じゃないって、その後の結果を知らなければ分からない。
同じように、何が自分の人生にとって大切かなんて後になってみないと分からないのかもしれない。
私が最初の就職で失敗したことも、今のこの状況に繋がっていると思えば人生の転機だったとも言える。
その時はただ苦いだけの出来事も、後になってみるとまた違った味わいになることもあるんだと知った。
今の私は、毎日に向き合っているだけで幸せだ。
大切な人のためにできることをしているだけで、どんな苦労も些細なことになってしまうから。
人生におけるacidityとbitternessは決して美味しくなんかないけれど、結果的に愉しめるよう、向き合っていくしかないのかもしれない。
生きていればその分、悲しいことも増えていくけれど。
出会える一杯のコーヒーの数も増えていく。
その一杯が、人生を変えることだってある。
今日も世界のどこかにあるはずの、好きな人と飲むコーヒーの風景、ひとりで飲むコーヒーの贅沢な時間。
私には、コーヒーの魅力を教えてくれた人がいた。
その人と私は、一緒にいるとお互いに対して嫉妬してばかり。
だけどそれは認め合って尊敬し合う関係にも近くて、一緒に仕事をしているだけで毎日が発見の連続で。
この日常を、私は絶対に手放さないと誓った。
……なんて、今は隣の大好きな人を見ながら幸せを噛みめている。
ナツさんがこれからも私のコーヒーの、そして人生の中心にいてくれますように。
<The END>
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