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「どうして、生きてたの?わたしのアイズは絶対なのに」
突然ドームに現れたヘレイスが、イリアナを睨み付けている。
「誰かの力だろうな。誰だろうな?」
ヘレイスの隣に立つグロウが、辺りを見回した。
「まぁ、関係ないか。皆殺しだ」
グロウはそう言うと、左手で右腕に触れた。その瞬間、グロウの右腕だけが巨大化した。
グロウの右腕が動いた。その瞬間、ヘレイスとグロウを除く、この場に居た全ての者が消えた。
「帰るか」
「そうね」
グロウの左手が右腕に触れた。そして、ヘレイスとグロウが消えた。
闇が消え、元の森に戻った。生徒の姿はどこにもない。やはり消されてしまったようだ。
音が鳴った。何もなかった場所に、ロジョブが現れた。
「…みんな」
ロジョブは悲しそうに呟いた。
ロジョブは知ったのだ。みんながいない未来を。いないという事は、二度と会えないという事だ。イリアナの力を受け継いだロジョブは、それを知った。
ロジョブだけが生き残った。それはイリアナが命を掛けて発動した力のおかげだ。イリアナは異なる二つの力を持っていた。一つは未来を知る力。もう一つは、人を数分この世から消す力だ。だが、人を数分この世から消す力には弱点があった。命と引き換えなければ使えない力なのだ。
イリアナはヘレイスとグロウが現れた瞬間知った。その先の未来を。今までは、最大でも十分先までしか知れなかった未来。だが、何年も先の未来を瞬時に知った。
ロジョブが星を救う事ができる唯一の人。ロジョブが消えれば星が消える。同時に幾つもの未来を知ったイリアナが、命を掛けロジョブを守ったのだ。
イリアナの力を受け継いだのは、元からあるロジョブの力だ。
ロジョブは知った。自分の未来を。そしてロジョブは知った。自分がその昔、神と呼ばれていたゼウスの生まれ変わりであると。
夜になった。普段なら、月が消えた世界は闇に包まれている。だが、今夜は違った。空には月の欠片が浮かんでいる。それは、ゼウスが生き返った証。
月が満月になる夜、ロジョブはゼウスと呼ばれた頃の力を、全て取り戻すかもしれない。
終わり
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