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「はい…すいません」
聞こえないぐらいの小さな声だった筈。だがイリアナにそれは通じない。なぜなら彼女はこれから起こりうる事を知っているからだ。それは実際に起こらなかった事も、彼女は知っている。起こった未来。起こらなかった未来。それを彼女は知っているのだ。それが彼女の能力、ビジョンの力だ。
そんな彼女の力だが、欠点がある。それは遠い未来を知る事ができないという事だ。知る事ができる未来は、近い未来。どんなに遠くても、十分が限界だ。
ユリイは舌を出しながら座ろうとした。だが、直ぐに舌を引っ込めた。イリアナに知られるからだ。イリアナは生徒に厳しい教師だ。知られれば怒られるだろう。
黒板に視線を向けていたイリアナが振り返った。ユリイはドキリとした。舌を出そうとしていた事を知られたと思ったのだ。だが、違ったようだ。
「危ない!みんな早くこの場所から逃げて!」
イリアナが叫んだ。
生徒達は、イリアナがジョークを言う性格でない事を知っている。直ぐには理解できなかった生徒達だが、次第に騒ぎ出した。
「みんな!早くここから逃げて!」
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