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「…おい、大丈夫か?」
暗闇の中、誰かが言った。
暗闇だったのは周りのせいではない。瞼を閉じているからだ。その声に反応したロジョブは瞼を開いた。
「…シビリ」
ロジョブは目の前にいる者の名を口にした。
「ゆっくり起き上がってくれ」
ロジョブはゆっくりと起き上がった。
周りには、かなりの人数の者がいた。起きている者もいれば、倒れている者もいる。そのどれもが知っている顔だ。クラスメートだ。
ロジョブは思い出した。イリアナが逃げろと叫んでいた。そして、逃げようとした。そこからは覚えていない。
ロジョブはシビリに尋ねようと視線を向けた。シビリはまだ倒れているクラスメートを起こそうとしている。クラスメートに触れたシビリの手が光った。ロジョブはその光の正体を知っている。それは、シビリの力だ。
シビリには、瞬時に人を別の場所に連れ去る力がある。一度に連れ去れる人数は、三十人程度だとロジョブは聞いている。
シビリの手の光は、連れ去った者の精神をここに呼び戻す為に必要なものだ。体と精神は別々の場所に飛ばされている。何故そんな複雑な原理なのか、シビリ自身理解していなかった。
ロジョブは辺りを見回した。森の中にいるようだ。日は射している。太陽の光だ。間違いなく夜ではないだろう。
シビリは忙しなく動いている。一人を残して全員目を覚ました。残るはイリアナだけだ。イリアナは少し離れた場所で倒れている。
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