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「…んせい、先生」
イリアナの耳にシビリの呼び掛ける声が届いた。精神が体内に戻ったイリアナの瞼がゆっくりと開いた。
「…シビリ?」
精神は体内に戻ったばかり。まだ覚醒しきってはいない。
一秒…五秒…十秒。次第に意識は覚醒していく。そして、イリアナは直ぐに知った。これから起こりうる可能性がある未来を。
「みんな、逃げて!また、来る!」
イリアナが叫んだ。
衝撃が走った。辺りが暗闇になった。だが、暗闇になっているのは辺りだけだ。みんなは、透明なドームの中にいる。ユリイの力だ。イリアナはそれに直ぐに気付いた。
「ユリイ、絶対に破らせないで!その闇に触れたら、私達は消えてしまう!」
イリアナはそう叫ぶと、シビリに視線を向けた。
「シビリ、私達をまた移動させて!」
だが、シビリの顔が曇った。
「…先生…全員を連れ去る力は、もう残ってないよ」
イリアナは息を飲んだ。だが、何とかしないと、全員消えてしまう。
「…一人ずつなら、行ける?」
イリアナは心の中で願った。だが、シビリが答える前に知ってしまった。シビリは後、数十分は誰一人連れ去る事ができない。力を使い過ぎたのだ。
「…力を使い過ぎた。数十分は力を使えないよ」
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