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「シビリ、手を掴んで」
その言葉に、シビリはヨルシアの両手を掴んだ。
体に触れずに回復させる事もできるが、この方法が一番早く回復できる。更に目を閉じ、祈りを込めると、回復速度は速くなる。
イリアナは改めて周りを見回した。生徒は全部で三十人。みんなにはそれぞれ異なる力がある。生徒がどのような力があるか、イリアナはその全てを把握している。だが、ここから抜け出す事ができるのは、やはりシビリの力だけだ。
生徒達は怯えている者もいるが、震えてはいない。それは日頃から訓練を受けてきたおかげだろう。
特殊な力を持って産まれてくる者がいる。それがここにいる生徒達だ。特殊な力を持って産まれてくる確率は百万人に一人だと言われている。それを人は、選ばれし子供達と呼んでいる。
選ばれし子供達の事は、代々受け継がれてきた聖書の中に書かれている。
聖書は分厚い。かなりのページ数がある。だが、解読できている文は少ない。大半の文が、未だ何が書かれているか分かっていない。それは聖書に力が込めらているからだ。聖書を作った者、あるいは違う者がなんらかの理由で力を使い読めなくしたようだ。
選ばれし子供達は世界中から集められ、学校で暮らしている。そこで自分の力を伸ばし、来る日に向け訓練しているのだ。
イリアナは聖書の一文を思い出した。
『星が滅亡の危機に立たされた時、選ばれし子供がそれを救う』
今がその星の危機なのかもしれない。イリアナの額に冷たい汗が滲んだ。そして知った。起こるかもしれない未来を。
「…みんな!敵が来るわ!」
イリアナが叫んだ瞬間、ドームの中に人影が二つ増えた。
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