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Ⅹ
シャワーから上がった時、アルバはシャツに袖を通したところだった。アルバの紅髪は、陽光が透けて、一層紅く見えた。
アルバは麗良を振り返って「おはよ」と言うと、ベッドに腰を下ろし、スマホに目を落とした。
「おはよう」
麗良は、間を置いてから言った。
「あのさ、契約の話なんだけど」
「うん」
「確認だけど、戻りたいって言ったら、戻れるんだよね?」
アルバは一瞬麗良を見てから、目を逸らし「ああ」と答えた。
「あなたも、一緒だよね?」
アルバは、わずかに沈黙する。
「……ああ」
「違うの?面倒みるって言わなかった」
「みるよ」と答えた口調は、そっけない。
「なら、契約する」
アルバは麗良を一瞥して、それから妙に冷淡に「分かった」と言った。そして、おもむろに立ち上がる。
「ここで待ってて。着替えといてね」
そう指図して、アルバはスマホを耳に当てたまま、開かなかったはずのドアから出て行った。
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