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18.愚にかへる
昨日は立春でした。立春といえば小林一茶の次の句が有名ですね。
「春立つや 愚の上に又 愚にかへる」
「春立つ」とは春の季語。春という新しい一年の始まりがめぐってきても、自分は古い一年と同じように愚かなままであり、新しい一年も自分は愚かなままなんだろうなあ、という意味合いの俳句。
意識の高い現代にあっては、愚かさから抜け出さなければいけないと、鼻息荒く自己啓発や自己研鑽に励もう! みたいな警告にも受け取られそうだ。
けれども、小林一茶もまた猛勉強に励んだ人らしい。
暮らし向きは貧しいながらも、一茶は古事記や万葉集などの古典を読み込み、知識を吸収していったという。もちろん、日本の古典ばかりではなく、詩経や易経といった漢籍もまた同じ。
それでも「愚の上に又 愚にかへる」と詠むあたり、小林一茶の飽くなき知識への探究心が読み取れそうであります。いくら学んでも学び足りないなあ、みたいなね。
そんなふうに古典の膨大な知識があったからこそ、十七文字の短さの中にもさまざまな解釈や情景の広がりを感じられるような俳句を作り続けられたのだろう。
そしてまた、自分は愚であるという諦念にも自己卑下にも似た心境がなんともいい味わいを出している。
SNSなどでは、多くの人がいかに自分が優位であるかを競っているでしょう。そういうのって、見ているだけでこっちまで疲れる。そこまで肩に力を入れなくてもいいじゃないですかと言いたくなってしまう。
「愚にかへる」とは、そんなひけらかしとは対極にあって、そこがいいのですよ。けっきょく人間は「愚にかへる」んだよね、と肩から力が抜ける感じがたまらないですね。
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