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「碧。わたし、悠介と結婚するの」
幼馴染の星にそう告げられたのは、師走のはじめ、クリスマスソングが流れるカフェでのこと。
「結婚式には、碧に来て欲しいな」
手にしていたマグカップの中のカフェモカが、私の表情の代わりに大きく揺れた。
私と星と悠介は、家が近所で、赤ちゃんの時から一緒に遊んだ仲。
私がいつも二人を連れ回して。悠介は「仕方無いな」って顔をしながらも、私より一回り背の小さい星の手を引いて。
公園の砂場で、笑い合いながら砂山にトンネルを掘ったり。
日が暮れるまで河川敷を走ったり。
夏の夜空の下、ひとつの望遠鏡を代わる代わる覗いて、星座を探したり。
ちょっとおしゃれをして、若者が集う街へ繰り出したり。
何をするにも、三人一緒だった。
だけど、男の子がひとり、女の子がふたり。
そんな三人は、平等に幸せになれるはずが無くて。
ふたつの果実しか日の当たらない場所からは、ひとつが弾き出されて、腐り落ちてゆくだけ。
そのひとつが、私だっただけだ。
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