第十五話『初めてのギルド』

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第十五話『初めてのギルド』

 *(マレフィクス視点)*  六月十五日、曜日は土曜で学校は休日。  僕は朝早く、ある場所に訪れていた。  大都市メディウムに一つだけ存在する『ギルド』。  ゲームとかで見るギルドと同じイメージだったが、少し違った。  ギルドは、大きなショッピングモールのような、またはお城のような広さで、中にいろんな設備が用意されている。  一階、受付カウンター。  ここがメイン、依頼を受ける場所だ。  ギルドで、依頼は『クエスト』と呼ばれている。  二階、武器や防具が売られてる店舗。  それ以外にも、薬草や魔道具がある雑貨、武器工房、などなど。  三階、料理店。  クエスト後に使用されることがほとんど。  多くの料理店が並んだ場所だ。  ギルドの登録は一階の受付でできる。  さっそく行こう。 「こんにちは、ギルドの登録したいんだけど」 「登録ですね。でしたら年齢の確認と保護者の同意が必要ですよ」 「分かりました」  受付人に学生証を渡し、年齢を確認させる。 「はい、マレフィクス.ベゼ.ラズル13歳、確認が取れました」 「保護者家から出れないような老人なんだけどさ、拇印貰ってきたからこれで良い?」 「はぁぁ、仕方ありません。特別ですよ?」  本当は拇印じゃダメらしいが、甘い人で良かった。  きっと、面倒事が嫌いなタイプだな。 「ありがとう」 「今ギルドカードを発行しますので、お待ちを」  受付人が発行したギルドカード、これは冒険者としての個人情報が載ったカードだ。  ランク、名前、年齢、これが必要最低限の情報。  他は自分で好きに情報を載っけて良い。  今僕のランクは『D4』。  ランクは下からD4、D3、D2、D1、C4、C3、C2、C1、B4、B3、B2、B1、A4、A3、A2、A1、S。  Sランクになるには、早くても30年掛かるとか掛からないとか。  クエストを熟した数や、功績によってランクが上がる。 「どうぞ、ギルドカードです」 「どうも。このままクエストを受けたいんだけど、クエスト一覧みたいなのは?」 「まさかですが、一人で受けるのですか?」 「そうだよ」 「最初はパーティを組むことをおすすめしますが……」  基本はパーティを組んで、パーティメンバーと共にクエストを熟していくらしい。  ソロでクエストに挑む者は、ギルド内では変わり者扱いだ。 「そこの少年、パーティメンバーをお探しかい?」  その時、30代くらいの男女二名が話しかけてきた。 「いや」 「エリオットさん、ハンナさん、良い所に来ました」  男の方はエリオット、女の方はハンナという名前らしい。 「こんにちはセレナさん、どうしたんですか一体?」 「この子が初めてのクエストを一人で受けようとしたんです」 「つまり、この子とパーティメンバーになってあげろと?……勿論オーケーですよ」 「ありがとうございます」  ――こいつら、僕のことを勝手に決めやがった。 「マレフィクス、この二人はAランクの常連冒険者です。慣れるまでは二人とクエストを受けようにして下さいね」 「分かりましたよ」  少し腑に落ちないが、仕方ない。  受付人を通さないとクエストを受けれないし、一人で何も分からない状態より、この二人を利用する方が良い気がする。 「よろしくな、少年」 「よろしくね、マレフィクス」 「どうぞよろしく」  * * *  エリオットとハンナの二人は、すぐにクエストを受けずに、僕を連れて二階に向かった。 「最初は装備よ。高くても良いから、自分に合った良い装備を買うべきよ」  確かに、エリオットもハンナも良い装備を身に付けている。  防具も立派だが、それ以上に武器が立派だ。  エリオットは剣、ハンナは弓、かなり高そうだ。  そして二人は、多くある武器屋や防具屋の一つを選び、店の中に入った。  店には、多くの武器や防具が飾ってあり、小太りでガタイのい店主が、どっしりと座っている。 「こんにちは」 「おぉ!エリオットにハンナじゃねぇか!久しぶりだな!お前ら結婚したんだってな?おめでとさん」 「へへっ、ありがとうございます」  エリオットとハンナは夫婦らしい。  夫婦で冒険者なんて、随分変な奴らだな。 「その子は?まさかお前らの……いやだとしたら随分前に……かっ、隠し子か!?」 「勘違いしないで下さい。新人の冒険者ですよ」 「マレフィクスです。よろしく」 「おぉ、よろしくな坊や」  店主のおっちゃんと握手を交わし、挨拶を済ませる。 「この子の装備を買いたいんだけど」 「装備ならまず武器だな。武器を決めなければ防具を決めれねぇ。ほら坊や、好きな武器選べ」  店主が見せてきたのは、基本武器六つの絵と、その説明が書いた紙だ。  武器その一、剣。  シンプル故、一番人気の武器。  エリオットが使用している武器だ。  剣に限ったことでは無いが、多少形や性能が違う物もある。  武器その二、双剣。  短剣を二つ使用する二刀流のスタイルだ。  近接戦闘に向いてる武器だ。  武器その四、槍。  相手との間をとって戦うスタイル。  槍の長さは人それぞれだが、結構人気武器らしい。  武器その四、ハンマー。  重いが一番パワーのある武器。  開かずの扉や硬い鉱石を壊すのに使う冒険者も居るらしい。  武器その五、弓矢。  中距離から矢を放つスタイルの武器。  ハンナが使用している武器だ。  武器その六、銃。  一番種類のある武器。  スナイパーライフルなら、武器の中で一番射程距離が長い。 「双剣で」 「随分判断が早いな。双剣はそこだ、好きに見ろ」  飾ってある双剣に目を通す。  長めの物もあれば短めの物もあり、刃が真っ直ぐな物もあれば綺麗に曲がった物もある。 「これ」  僕が選んだのは、刃が真っ直ぐな短剣、長さは中くらいの物だ。  刃の中央は赤い線があり、刃そのものは黒い。  持ちやすいし、デザインも気に入った。 「じゃあ次は防具だ。双剣だから動きやすいのが良いだろ。どれ、俺が選んでやる」  そう言って店主が持ってきたのは、上部に身に付ける鎖帷子、赤と黒のローブ、皮の手袋、皮のブーツの四つだ。 「じゃあそれで」 「……まっ、まいど」  セスターから貰ったお金で、会計を済ませる。  装備を身に付けると、他の店にも回る。  回った店では、上半身に付けるポーチ、薬草、砥石などを買った。 「よし、クエストに行こうか」  やっとクエストを受けれる。  そう思い一階に戻ると、多くの人で溢れ返っていた。  ギルドは朝8時からやっているが、9時半となれば混み始めるらしい。 『クエストボード』と呼ばれる、クエストが貼られる場所に人々が集まってて、今すぐ受けれそうにない。 「あら、混んでるね。少し待とうか」  待つこと20分、やっとクエストボードに足を運べた。 「どんなクエストがあるの?」 「日によって違うさ。魔物退治、鉱石回収、本当にいろいろ」  エリオットは、クエストに次々と目を通す。 「マレフィクスは何がいいの?」 「ドラゴン退治とか」 「……つまり魔物退治ね。ならこれはどう?」  エリオットが指を指したのは、スライム討伐だった。  学校で魔物のことを習っているが、スライムは最弱の魔物。 「冗談キツい、それならこっち」  僕が指を指したのは、鉱石回収のクエスト。 「これは洞窟でのクエストだよ?洞窟は平原より危険な魔物が多い、おすすめはしないな」 「なら、尚更行こう」 「まぁ、僕ら強いし……大丈夫か」  そのクエストを取り、受付カウンターまで待って行く。 「フローライト10kgの回収、承認しました」 「では、スピリャ洞窟に転送します……あっ、マレフィクス、貴方様に転送機を渡していませんでしたね。今渡します」  受付人が僕に渡したのは、腕時計の形をした魔道具だ。  魔道具とは、魔法の力を利用して作られた非現実的な道具。  この腕時計の魔道具は、クエスト場所に転送する為の魔道具だ。 「ボタンを二回連続押せばこちらに戻れますから」 「じゃあ転送をお願いします」 「では、お気を付けて」  転送機を腕に付けると、僕の体は光を放ち、ギルドから姿を消した。
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