07.あした色リユニオン

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…ぴったり。ぴったりなんだよ。 こんなにも。 ななせは私にぴったり()まる。あるべき形に戻るというか、本来の姿に還るというか。最初からそう決まってたみたいに。分かたれた二つの欠片がぴったり重なるみたいに。行き場を失くした最後のピースを見つけたみたいに。ななせと一つに繋がると身体の中が安心で満ちて、自分の存在を確認することが出来る。 生きてると思う。ここにいるんだと分かる。 ふたつでひとつ。 元々、私たちは一つの塊で、それが二つに分かれてしまったんじゃないかと思うほど、ななせと離れる時はいつも、半身を失くしたみたいに寂しくて、心許なくて、痛い。運命とか。魂の相手とか。そういうものが本当にあるなら、私にとってそれはななせで。ななせだけが私の存在を教えてくれる。 「…ななせ、…―――っ」 ななせに揺られて甘く濃密な海に溶け出す。快感に震える身体と身体はもう境界線が分からないほど溶け合って。とろけて絡まって交わって。恍惚に浮かぶ。 幾度となく弾けながら真っ白な閃光に飛び散って。 ななせに穿たれて混ぜ合わされて繋ぎ止められる。 時間も空間も遥かに溶け落ちて、ななせしかいなくて。ななせが全てで。 その心地よい世界の果てで、涙に煙った問いかけがひそやかに落ちてくる。 こんなにぴったりなのに。 他に誰も。何も。入れないのに。 ななせがいいのに。ななせしかダメなのに。 なんで、ななせは、… 「――…、私じゃ、ダメなの?」 喘ぎ過ぎて声が出なくて、涙に掠れて、吐息混じりの言葉にならない問いかけが零れた。 私を奥深く隅々まで満たすななせは、言葉じゃなくて、溶け合った身体か絡まり合った舌か重なり合った心臓の音か、もしくはその全部かでそれを読み取って、 「…違う」 低く掠れた甘い声で、優しく優しく、残酷な答えを囁いた。 「…お前が俺じゃダメなんだよ」 何度も何度も喜びで震える身体に一筋の現実が降り積もる。 もう無理なのに限界を超えて啼かされた身体には力が入らない。 だけど、恍惚にまどろんでもななせを離せない。 眠りに就いたら、朝が来たら、この腕を緩めたら、きっと、多分。 ななせはいなくなってしまう。 どんなにがんじがらめにしがみ付いても。 するりと抜けて、いってしまう。 だからもう、弾け飛びたくないのに、怖いくらいぴったりで私を知り尽くしているななせの身体に、巧みに揺らされて高められてまた次の波に砕け散ってしまう。 「や、…も、…なな、…せ…」 願いは一つなのに。もう言葉にならない。 固く繋いだはずの手が、離さないと誓った心が、ゆっくり遠ざかっていく。 いかないで。 ふわふわ漂って。ゆらゆら揺らめいて。 どうしようもなく落ちていく。 「…ありがとう」 限界のその向こう側でなけなしの意識が、最後にななせの心に沁みる甘い声を聞いた。 「愛してる、…―――」
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