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幼馴染の彼女が、山本を好いていることは分かっている。
でも山本は、奴の幼馴染のことが好きなのだ。 そしてその幼馴染さんも山本のことが大好きで、……これでは彼女が辛い思いをすることは目に見えている。
だから、告白した。 俺の言うことになど耳を貸すはずもないって、最初から分かっていたけれど。
彼女は幼馴染さんを蹴落としてまで、山本に取り入ろうとしている訳ではないようだ。 そういう行為に走るのならば、是が非でも止めるのだが……。 彼女が人様から同情だとか哀れみ、憐憫の目を向けられるなんて、俺が我慢出来ない。
『はあぁ~……今日も山本くん、カッコイイわぁ……』
今日も物陰に隠れて、山本に向けて熱い視線を送る彼女。 一歩間違えればストーカーじゃないか。 なんでわざわざ俺の前で、山本好きであることをアピールしてくるのか。 そんなに俺の、あの一世一代の告白を無かったことにしたいのか。
『やめとけよ』
『傷つくだけだって』
散々言ってきた。 だけどそれらの言葉が、ますます彼女に火を付けているのだ、と最近気がついた。
『うっるさいわね! 私は山本くんが好きなの―――!』
『はいはーい……知ってますー』
もう、俺は切り替えた。 彼女が負け犬の遠吠えをしている情けないサマを、せめて人様の目にさらさないようにしよう、と。
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