ツンおめ

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***** 四月になり、私たちは中学三年生に進級した。 そこで行われたクラス替えにて、なんとなんと山本くんと念願の同じクラスになれたのだ! ……山本くんの彼女と、私の幼馴染も引っ付いてきたけれど……。 私は自分の名字が『吉岡』であることに、これほど感謝したことはない。 名簿順にて彼と私と連続していた。 私の、私のすぐ目の前に憧れの山本くんがいる……! なりふり構っていられなかった。 山本くんは野球部だ。 少しでも近づきたかった。 別に彼女になりたいだなんてそんなことは思っていない。 ただ、山本くんの近くに私の場所を作りたかった。 三年生からだが、野球部のマネージャーになるために野球部に掛け合った。 お姉ちゃんの友達が去年まで野球部のマネージャーをしていて、そんな彼女に憧れて、私も彼女のように部のために一丸となって頑張りたい! となんなりと理由をつけた。 野球部の顧問の先生は、去年に引退した敏腕マネージャーの後見になってくれ、と快諾してくれた。 元来人のお世話やら管理などをすることは嫌いではない。 顧問の先生に丸々の嘘をついた訳ではないのだ。 「ふふ~ん。 野球部のマネージャーの位置、勝ち取っちゃった~。 これで山本くんをより一層近くから見られる!」 帰り道、帰宅時間が重なれば一緒に帰っている幼馴染にその旨を告げる。 ちなみに二年間は、家庭科部で頑張ってきた。 これも顧問の先生に評価された一因だ。 報告しながらも、この幼馴染からの返事は想像がついていた。 『俺の前でわざわざ言わなくったって』や『あーはい、そうですかー、頑張れよー』の類いだろう、と。 しかし、彼は長いこと返事をしなかった。 「ねえ、ちょっと。 聞いてる? 人が頑張って掛け合ったって言ってるのに……」 「ん。 良かったじゃん。 マネージャー就任、おめでとう」 ……『おめでとう』? 彼はたしかに、おめでとう、と言ったのだ。
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