ツンおめ

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……返事に困った。 おめでとうと言われて、嫌な気はしないはずだ。 それなのに、素直に喜べない……? 何故? 「……あ、ありがと……?」 思わず幼馴染の顔を見ると、目を細めて微笑んでいるようだった。 ……喜んで、くれてるの……? それ以上、あいつはこの話題に触れてこなかった。 私からも、どう言葉を続けていいやら分からなかったので、早々に話題を変えた。 そしてそのまま、家についてしまった。 悶々とした思いだけが残った。 課題プリントをしていても、晩御飯を食べても、お風呂に入っても、ベッドの中でさえ、気分がスッキリすることはなかった。 ずっと、あいつの『おめでとう』が離れない。 なんだか悔しい。 大体なぜあいつは、『おめでとう』などと言ったのか。 マネージャーに就任すること、それは山本くんに近づくことだ。 あいつは、私が山本くんに近づいてもOKだと、つまりはこういう了見なのか。 信じられない、私のことを『好きだ』なんて言っておいて。 ……そこまで考えたら、さすがに気がついてしまう。 つまり私は、あいつを……困らせたかったのだ。 私のことだけを見てくれているあいつの前で、虚勢を張りたかったのだ。 そんな私自身に酔っていたのかもしれない。 「……ふふっ……」 思わず笑ってしまう。 明日朝一番で、あいつに言ってやろう。 私と同じ悶々を味わわせてやる。
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