ツンおめ

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そして、次の日。 朝は一緒に登校している訳ではない。 俺は剣道部の朝練があるし、山本とその幼馴染さんのように、待ち合わせして一緒に登校する仲でもないのだ。 朝練が終わり教室に入ると、彼女のほうから俺に近づいてきた。 以前に朝練の後は嫌がったくせに。 ……野球部のマネージャーをやっていくために、汗臭い匂いにも慣れようとしているのだろうか、だとしたら見上げたマネージャー魂だ。 「おはよう」 「……おう、おはよ……」 彼女はどことなく嬉しそうに笑った。 また何か企んでいるのだろうか、瞬間的にそう思った。 「良かったじゃない。 おめでとう」 「……え? なに、が……?」 「ふふふ、ヤスにとっては良かったんじゃないかな! じゃあね」 「ちょ、吉岡……」 彼女はそれだけ言って、席に戻ってしまった。 新学期からまだ席替えが行われていない今、席は名簿順だ。 安田である俺の後ろが山本、その後ろが彼女……彼女を振り返ろうものなら、嫌でも山本が目に入ってしまう。 地味にそれは嫌なのだ。 しばらく経ってから意を決して振り向けば、案の定。 俺からすれば羨ましいような顔をして、彼女は山本の背中に熱い視線を送っていた。 ……あぁやはり、見るんじゃなかった。 『おめでとう』……? ……俺にとって、良かった? なんだろう、まったくサッパリ分からない。 俺にとっていいことは、彼女が山本を諦めてくれることだけど……依然彼女は山本に夢中のようだし。 まさか、おめでとうという言葉を聞いて、悶々とするなんて。 ちくしょう、新手の嫌がらせなのか……?
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