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私は相当に我儘なのだろう。 山本くんを追いかけていたい、けれど、傍には幼馴染のあいつに付いていて欲しいと思うのだから。
仕方ないではないか、それが私だ。 そんな私を好きだというのなら、そんな私ごと引き受けてもらいたい。 責任をとってもらわないと。
この感情がどういうことなのかは正直まだ分からないが、……あいつが近くにいることを疎ましくなど思ってはいない。 むしろ、なんだかんだで傍にいてくれることに妙な安心感を得てしまっている。
(……良かったじゃない。 ようやく私の視界に入れて)
山本くんから少しだけ視線をシフトして、その前の席の幼馴染の背中を見る。 口角があがったのが分かった。こんな顔、あいつには絶対向けてやらないけど。
山本くんばかり見つめてきたから、気づかなかった。 あいつ、あんなに肩幅が広かったんだ。
もしも、あいつのガッシリ体型に目がくらんだ女子が。 気の迷いで寄ってきたりなんかしたら……一瞬そんなことも考えたけれど、すぐに打ち消した。
いやぁまさか、そんな。 あいつに限ってそれはないだろう。 だって無口だし。 愛想ないし。 文武両道だけの真面目くんだし。 カッコよくなんてないし……背は高いけど。 たまに笑うと可愛い顔をするけど。 意外に動物好きだったりするけど……!
その時は……そう、それこそ。 満面の笑みで言ってやろう、『おめでとう』と。
だって、それでもあいつは私を選ぶだろう。 その時は、私は……。
いや、そんな時なんて。 ないない。 来るわけ、ないよね。
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