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見送られて、急いで階段をあがった。
あ、熊野の好きな人を聞きそびれた、あとで聞かなくちゃ。
熊野はなぜか私の好きな人を知っているから、私も知る権利はある。
私の好きな人は、同じ課の黒瀬巧巳(くろせたくみ)さん。年齢は私や熊野より6歳上の31歳。
黒瀬さんは私が新入社員だった頃の教育係で、とても頼りになる先輩だ。飛び抜けたイケメンではなくてごく普通の見た目の人だけど、笑顔が素敵で私はときめいた。
だけど、黒瀬さんには長く交際している恋人がいた。恋人ならもしかして破局して、チャンスが巡ってくるのではとひそかに想っていた。
ひそかに別れを願っていた……。
しかし、人の不幸を考えたのがいけないのだろう……願いは叶わず。別れるどころか結婚してしまった。
結婚すると黒瀬さんから知らされた時は、目の前が真っ暗になった。お祝いの言葉を言ったかどうかの記憶もない。
黒瀬さんへの片想いを知っているのは、熊野だけ。どうして気付いたのかは不明だが「黒瀬さんを好きだろ?」と言われた時は、かなり焦った。
熊野は黒瀬さんの結婚を知って、落ち込む私に誘ってきた。
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