1309人が本棚に入れています
本棚に追加
今日も爽やかで、素敵だな。
あの笑顔、好きだな。
伏せ目も良い。
彼だけが輝いて見える。
ずっと見ていても飽きない……。
「加納……締まりのない顔してるな」
「へ? あ、熊野……やだ、見ないでよ」
こっそりと見ていたことを指摘され、他の人にも気付かれているのではないかと不安になる。
周囲をキョロキョロと気にしていると、熊野が腰に手を当てて、小さく息を吐いた。
「誰も気付いてないよ、俺しか」
「そう……熊野も私なんか見ていないで、仕事しなよ」
「俺は、お前しか見てねーよ」
「どういうこと?」
私の疑問に熊野は返事をしないで、自分のデスクに戻る。
私に文句言うために、私を見ていると言うの?
悪趣味としか思えない。
そんなことをしてる暇があったら、仕事しなさいよ。
あ、私もだ。
黒瀬さんを見ている暇があるなら、仕事しないと。
いそいそとパソコンに目を向けて、ひとつのフォルダを開いた。
しかし、集中力は三十分で切れる。
雑念を払って、真剣にキーボードを叩いていた私の鼻を好きな香りがかすめたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!