森 希々花はいつも二番手***

11/11
前へ
/263ページ
次へ
頬を膨らませたままじっとりと見上げると、彼は「ははっ、無粋で悪いな」と楽しげに笑った。 くっ、悔しかぁ~!なんねそれ、その笑顔!腹黒ヘタレのくせばしよって…! そんな無邪気な笑顔を見せられたら、文句を言うことなんて出来なくなるじゃない。 さっきまでの仄暗い気持ちが、一気にギュンと上を向いた。 だけど―――。 「ところで、静川(しずかわ)はどうだった?また今年もこのイベントはスルーだったのか?」 彼が訊ねたその言葉に、あたしの気持ちは真っ逆さま。上空千メートルから地上に落下―――どころか、そのまま地下千メートルくらいまでのめり込みそう。 そ、そんなこと……自分で訊けばよかろうもんっ! そう言いたいのをグッと堪えて、「静さんはぁ相変わらずですぅ」と軽く返しておく。 なにが悲しくて、恋敵の情報なんて教えないといけないのだろう。 今となってはそう思うけれど、仕方ない。 だってそれが、あたしと彼の間に結ばれた“協定”なのだから―――。
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4705人が本棚に入れています
本棚に追加