不毛な協定

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『静さんに、ハッキリ言わはったらええやないですかぁ』 ついポロっとそう口にしてしまったのは、あたしも酔っていたからだと思う。 あたしは別にお酒には弱い方じゃないけれど、ひたすらおいしそうにビールを呷る静さんと、どんなに日本酒を飲んでも顔色ひとつ変わらないザルな課長につられて、ついいつもよりもお酒が進んだ自覚はある。 あたしが口にした言葉に、彼はゆっくりと顔をこちらに向けた。 『――なんのことだ?』 彼がしらばっくれる様子が面白くない。 『隠しても無駄なんですぅ。課長にとって静さんがぁ特別なんやってことぉ、のん(・・)にはお見通しですよぉ?いいかげん静さんに気持ちを伝えはったらええんちゃいますかぁ』 前を向いて歩きながら得意げに言う。 『早ようせんとぉ、誰かに横からかっさらわれても知りま、……っ、』 ふと横を振り仰いだ時、鋭い瞳とぶつかった。 そこにいつもの胡散臭い笑顔はない。 『あ、』 やばい、いらんこと言ってしもうた。 そう思ったけど後の祭り。 『それをあいつに言ったのか?』 聞いたことのない低い声。あたしの背中に、ピリッとした緊張が走る。 結城課長の怒りを感じて、あたしは慌てて口を開いた。 『や、やだもぉ…課長ぉ、そんなこ、』 『あいつになにか少しでもよけいなことを言ったら、俺はおまえを許さない』
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