不毛な協定

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(まんざらじゃなさそうやね) 内心でほくそ笑みながら、「きゅるん」とした目で彼を見上げる。あたしの目は静さんほどは大きくないけど、黒目がちなのを活かしたアイメイクで子犬みたいなつぶらな瞳になる。このわんこ系メイクは合コンでも受けがいいのだ。 すると彼は、『これも契約のうちか?』と訊いてきた。 『これってぇなんですかぁ?』 分かっているけど敢えて分からないフリ。それを分かったうえで、彼は口角を上げて言った。 『お互いに目的を達成するまでの“つなぎ”になるっていうのは、こういうことかって言ってるんだ』 彼はそう言うや否や、あたしの唇を自分のもので塞いだ。 熱い舌に口腔をかき乱されながら、あたしは思っていた。 (なあんだ(なぁんね)。全然ピュアじゃないじゃん(なかっちゃん)ね) きっと彼は今まで、静さんのことを心に想いながらも、こうして別の女との情事を楽しんで来たのだろう。本命に埋めてもらえない隙間を、別の女で埋めて。そうして彼女に手を伸ばすタイミングを虎視眈々と計っている。 なんて腹黒ヘタレ男…!
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