不毛な協定

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本当に欲しいものがあるなら、がむしゃらに手を伸ばして、相手がどんなに逃げても追って行けばいいのに。 そう言ってやろうかと思ったけれど、よけいなお世話だとやめた。―――というよりも、彼のキスがあまりに気持ち良くて、そっちに気が取られたというか。 だって、すごくキモチイイ。多分相性がいいんだ。 あたしはずっと、自分のことを“一番”にしてくれるひとを探してきた。 “一番”っていうのは、そんなに簡単になれるもんじゃない。少なくともあたしにとってはかなりの努力が要ることで。 自分を磨いて相手の好みを知って―――色々な努力をしないと、あたしはいつまでも“二番手”止まりのまま。 “一番”になれないと賭けに負けてしまう。あたしの人生そこで“詰み”だ。 でも賭けに勝てれば誰でもいいってわけじゃない。 出来たらそこそこ(・・・・)見た目が良くて、そこそこ(・・・・)お金を持っていて。その上で相性(・・)が良ければ最高。セックスの相性を知るには、キスが一番手っ取り早いのだ。 (この腹黒ヘタレ男とは、確実に合うんだろう(合うっちゃろう)なぁ) その勘はやっぱり外れなかった。
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