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涙が浮かばないようにグッと眉間に力を込めてから、あたしは後ろを振り向かずにいつもと同じ高い声を出した。
「いちおぉ上司なんやしぃ、変なもんはぁあげられませぇん」
「一応って、おまえなぁ……」
彼が呆れたようについた溜め息が首筋にかかる。肩を竦めると体に巻き付いた腕に力が込められる。
耳元で「もう一回――いいだろ?」と低く囁かれて、お腹の下がズクンと疼いた。もうすっかり落ち着いたと思っていた熱は、彼の手にかかるとこんなふうに、いとも簡単に呼び戻されてしまう。
「んんっ…、」
後ろから耳朶を食まれて身を竦めると、その唇は首筋を辿りながら下りてきた。
後ろから回した両手が、あたしのささやかな膨らみを包み込みこむ。
「あんっ……、やっ、だめぇ……」
指の腹でキュッと先端を挟みながら揉まれると、腰から甘い愉悦が這い上がってきた。
「ダメ、じゃないだろ。相変わらず素直じゃないな」
言いながら彼が両手に力を込める。痛いくらいに揉みしだかれて、あたしは喘ぎ声を我慢できない。
手慣れた愛撫にあたしの体の芯に残っていた火があっという間に燃え上がる。
大人しくされるがままでいられなくなって、あたしは体の向きを変えて自分から彼の膝をまたいだ。
「バレンタインサービスか?」
にやりと口の端を上げた彼を一瞥すると、あたしは下着越しに当たる彼の昂りに押しつけるようにして腰を揺らしてやった。片方の眉をピクリと跳ねさせた彼が、あたしの腰を両手で掴む。
「心配しなくてもちゃんとお返しは奮発する―――一応、可愛い部下だからな」
そう口にするなりあたしの唇を塞いだ彼は、そのままあたしの躰を再び弄び始めた。
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