2人が本棚に入れています
本棚に追加
軍事国家ガルフの領地になってから奴隷制がなくなり、僕たちが解放されて数年。アリシアと僕をこき使っていたあの女の下から、僕はすぐさま離れた。うんと小さい、泣き虫で恐がりな僕だったらきっと、今もあの女の下にいただろう。
でも、今の僕は違う。唯一血の繋がった家族であるアリシアを守るのは僕しかいないから、僕は強くならなければいけないのだ。
アリシアがいうには、僕たちの生まれた故郷には父親と母親がいるらしい。
僕が物心つく前、僕らはそこで奴隷狩りに合い、異国の地に連れて行かれた。そんな僕だから、親の顔を覚えているはずもない。
そもそも僕は親に会ってみたいとか、そんな気持ちは一切ない。攫われて10年近くも僕らを放っているんだから、そんな奴らを親だとも思えない。
僕の家族はアリシアと、ここアンサンドラで僕の面倒を見てくれているじいちゃんだけだ。
じいちゃんは魔法使いで、アンサンドラの魔法使い居住区、マギアで魔法道具の店を営んでいる。僕はその店で働かせてもらうことになり、あの女の下を離れてから、日中はじいちゃんの店にいる。正直いうと、そこまで繁盛していないから給与がいいわけでもないのだけど。生きるためというよりも、じいちゃんは家族みたいな存在だからという理由で、僕はここにいる。いつかはアリシアをあそこから引っ張り出して、じいちゃんの店で雇ってもらおうかと僕は考えている。
最初のコメントを投稿しよう!